不動産サービス大手のジョーンズ ラング ラサール(JLL)とラサール インベストメント マネジメントは、2026年9月14日に「世界不動産透明度インデックス 2026」を発表しました。日本は世界88か国・地域の中で12位となり、制度や情報公開が最も進んだ最上位グループにとどまっています。
本記事で押さえるべき重要点は以下の3点です。
- 日本は最上位13か国に含まれるものの、直接投資マネーの80%超がこの上位陣へ集中しており、国レベルの安心感から個別資産の利回りを厳格に見極める段階へ移行しています。
- 建築物省エネ法の改正に伴う新築建物の基準適合義務化や気候関連情報の開示要請により、改修費用を投じる体力のないビルの資産価値下落が進んでいます。
- テナントや投資家の90%超がAIを利用する中、直接投資の20%を占めるに至ったデータセンター等の資産では、立地条件以上に送電網の容量確保がプロジェクト成立の境界線となっています。
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透明度上位市場への資本集中と日本の相対的ポジション
制度の整備やデータ開示が進む市場へ資金が偏る傾向が強まっています。最上位区分である「極めて高い透明性」に属する13か国の取引規模はこの2年間で64%拡大し、その他の市場を20ポイント上回るペースで成長しました。この上位13か国だけで、世界の収益不動産の56%、直接投資額全体の80%超を占めています。
日本はこのグループ内で世界12位に位置します。アジア太平洋地域ではオーストラリア(3位)に次ぐ順位で、シンガポール(13位)をわずかに上回っています。法制度の安定性や取引の公正さが評価され、海外からの大規模な投資資金を受け入れる基盤は維持されています。
ただし、インドやベトナム、韓国といった近隣諸国が制度基盤を整えてスコアを急速に伸ばしています。日本市場という枠組みだけで資金を呼び込める優位性は薄れつつあり、ポートフォリオ内の個々の資産が中長期的にキャッシュフローを生み出せるかどうかが問われる局面に入っています。

環境規制の強化がもたらす保有資産の選別と改修負担
今回の調査で世界的に最も改善が進んだ項目は、建物のエネルギー性能基準の明確化や、実際の消費エネルギーの追跡に関する情報開示でした。国際エネルギー機関は世界の電力需要が2035年までに40%以上増加すると試算しており、建物の消費効率は運用コストだけでなくテナント確保の前提条件となっています。
日本市場では、建築物省エネ法の抜本的な見直しにより、すべての新築建築物に対して厳しい効率基準への適合が義務付けられる枠組みが進行しています。あわせて、企業に対する気候関連リスクやエネルギー使用状況の開示要件も広がっています。
基準を満たす高機能なグリーンビルディングには国内外の機関投資家から有利な調達資金が集まる一方、断熱性や空調効率に劣る既存ビルは、高額な資本的支出(CAPEX)を投じて改修するか、賃料の下落と空室リスクを受け入れるかの選択を迫られます。環境対応への投資余力の有無が、保有資産の流動性を二分する境界線となっています。
オルタナティブ資産の拡大と電力インフラの制約
これまでの主力だったオフィスや商業施設に加え、データセンターや物流施設といったオルタナティブ資産への直接投資が増加しています。こうした資産の取引額は世界全体の20%を占め、10年前の2倍の水準に達しました。現在ではテナント企業や投資家の90%超がAIツールを活用しており、産業構造とワークプレイスの双面で生じている変化が、不動産市場における資本配分を塗り替えています。
しかし、これらの資産は一般的なオフィスビルに比べて運用実績データが十分に開示されておらず、投資判断に必要な情報の不足が課題となっています。とりわけ電力消費密度の高いデータセンターでは、土地の取得費用や利便性以上に、周辺の送電網から必要な受電容量を確保できるかどうかが開発可否を決定づけています。
日本国内においても、単に用地を保有しているだけでは開発事業者としての優位性を保てなくなっています。電力系統への接続や光ファイバー網の引き込みといった周辺インフラの適格性を押さえ、専門的な運用体制を組める企業のみに投資案件が集中する構造へと移行しています。

資金供給者の多様化と問われるスポンサーの実行力
物件取得や開発を支える金融面では、従来の国内銀行による貸出に加え、生命保険会社、デットファンド、プライベートクレジット事業者など、資金の出し手が多様化しています。JLLの信用指標ではすでに3.7兆米ドルを超える金融機関の提示レートが追跡されており、貸出市場の可視化が進んでいます。
これに伴い、資金調達における審査基準は市場全体の平均的な賃料や空室率を見る形から、保有・運営主体(スポンサー)固有の実行力を見極める形へとシフトしています。表面的な金利条件だけでなく、法令改正に伴う改修計画の遂行能力や、電力調達を安定してまとめ上げるノウハウの有無が、調達条件の格差となって現れています。
さらに、確定拠出年金や個人マネーを長期運用の不動産ファンドへ呼び込む規制改革が進む中、資産の適正な評価基準や流動性条項の開示が強く求められています。客観的なデータを開示し、インフラ制約に対応できる専門能力を持った運用主体にのみ資金が循環し、従来型の資産保有モデルに留まる主体との差が広がりつつあります。






