地方暮らしと都市生活の両立を支援:二地域居住促進制度とは?
2024年5月、二地域居住を後押しする「改正広域的地域活性化基盤整備法」が成立しました。これは、都市住民が地方にも生活拠点を持ち、双方で暮らすライフスタイルを支援する制度です。
地方自治体が二地域居住促進計画を作成することで、国からの財政支援を受けながら、住環境の整備や就業支援、地域住民との交流促進といった施策を展開できます。空き家改修やシェアオフィス整備、地域イベント開催など、具体的なアクションを通して二地域居住を促進し、地方への人の流れを創出することを目指しています。
人口減少・少子高齢化社会への対応策
二地域居住促進の背景
地方は人口減少・高齢化による深刻な人手不足、地域コミュニティの衰退、経済の縮小といった課題に直面しています。一方、都市部では、過密化によるストレスや生活コストの高騰、子育て環境の課題などが挙げられます。
二地域居住は、これらの都市部と地方の課題を同時に解決する可能性を秘めています。地方にとっては、関係人口の増加による活性化、都市部にとっては、ゆとりある生活の実現や多様な働き方の選択といったメリットがあります。また、少子化対策や地方分散社会の実現といった国全体の政策目標にも合致する取り組みとして期待されています。
具体的な支援内容と期待される効果
改正法に基づき、多岐にわたる支援策が用意されています。
- 住まい: フラット35の活用、空き家対策総合支援事業による改修費補助など、地方での住居確保を支援します。
- 仕事: テレワーク拠点整備支援、地方創生移住支援事業などにより、地方での就業機会の創出やテレワーク環境の整備を促進します。
- 地域融合: 農泊推進事業、交流人口増加のための事業などを通して、地域住民との交流を深め、地域活動への参加を促します。
- 情報提供: 全国版空き家・空き地バンクなど、二地域居住に必要な情報を提供する窓口を整備します。
これらの支援策は、単に地方への移住を促進するだけでなく、都市と地方の交流を深化させ、双方にとってメリットのある関係性を築くことを目指しています。地方の活性化、多様な働き方の実現、子育て環境の改善など、様々な効果が期待されています。
課 題
二地域居住促進制度の効果を最大化するためには、いくつかの課題があると思います。
効果があるのか
これまでの地方創生施策同様、多額の税金が投入される以上、その効果を厳密に検証する必要があります。過疎化対策として本当に有効なのか、費用対効果を綿密に分析し、実効性のある施策に絞り込む必要があります。
過去の地方振興策、移住施策、人口減対策を見ても、有効でないことは明らかです。
そもそも地方の過疎化を防ぐことは可能なのか、から問い直さないといけないかもしれません。
使われるのは私たちの税金。そして財政状況をみれば、「次の世代から借りてきた借金」を使うことになるのです。そして役所は自分の金ではないので、とかく財布の紐は甘くなりがちです。過去の失敗事例を教訓に、同じ轍を踏まないよう、徹底的な検証が必要です。
自治体に有効な企画ができるのか
魅力的な提案を打ち出せるかどうかは、自治体の企画力にかかっています。他の自治体と差別化を図り、二地域居住希望者のニーズを的確に捉えた企画を立案することが求められます。
地域振興策、移住施策だけでなく子育て支援などを見てみてもどの自治体のものも似たり寄ったり。
画一的な施策ではなく、地域の特性を活かしたオリジナリティあふれる企画が不可欠です。
地方の受け入れ体制
移住希望者にとって、地域住民の温かい歓迎とスムーズな受け入れは非常に重要です。移住してきたものの、地域が受け入れられず、移住者が出て行ってしまうケースを聞きます。
そもそも地方は都会から本当に来てほしいのか、を問い直すことも重要です。
地域住民との交流促進プログラムや、移住者支援ネットワークの構築など、受け入れ体制の整備が求められます。移住者と地域住民双方にとって、良好な関係を築けるよう、きめ細やかなサポートが必要です。
PDCAと前提の問い直し
これらの課題に適切に対処することで、二地域居住促進制度は、地方と都市が共に発展するWin-Winの関係を築くための、強力なツールとなるでしょう。
しっかりとPDCAサイクルを回すとともに、本当にこの施策を打つ必要があるのか、という前提条件を問いなすことも重要なことです。