日本経済新聞に下記のような記事が掲載されていました。
ニュースでは、
- 国際比較ではまだまだ日本の不動産は割安
- 海外マネーは都心の物件に一極集中
ということです。
日本の不動産市況は出遅れ
東京臨海部のタワーマンションが億ションとなったこと、多くの外国人がそれらのマンションを投資目的で所有していること、台湾の半導体メーカーTSMCが工場を設立した熊本県、オーストラリア人などによって発掘された北海道のニセコなど、不動産価格の高騰のニュースが紙面を賑わしていますが、OECD諸国に比べると「収入と比べた住宅価格」は低いそうです。
富山県でも公示価格が30数年ぶりに下げ止まるなどのニュースがあるなど、なんとなくデフレから脱却したのかなと思っておりましたが諸外国と比べるとまだまだ不動産から見た景気の回復は遅れているようです。
日本の不動産が割安な理由
新築志向が強い
さて、収入と比べた住宅価格が低い原因は、「新築志向が根強い」ことが大きく影響しているとのことです。
ここではその論理が書いていないのですが、ほかの論文等と併せて考えると
日本では新築志向が強い→中古住宅の流通が進まない→中古住宅の価格が安くなる(安くしないと売れない)
ということで、全体として住宅価格が上がりにくい、ということのようです。
住宅情報の未整備
この中古住宅の流通が進まないことの一因として、
さくら事務所(東京・渋谷)の長嶋修会長は「日本は建物の情報はブラックボックスだ。」ということです。
日本経済新聞 2024年8月13日 日本の住宅価格、収入比では割安 OECD平均下回る背景
これについては、広く認識されていて、
わが国においては,不動産流通時における建物の質に関する情報流通の量が極めて少なく,それが欧米にくらべて薄い既存住宅流通市場の背景となっているという指摘が行われて久しい。情報の非対称性問題が既存住宅流通の大きな原因であるという立場は,一定の共通認識となっている。
系統的な不動産情報整備施策とは?日本不動産学会誌/第22巻第4号・2009.4
情報未整備が地方への海外マネーを遠ざけている
そして
「データを整え、ネットを通じて海外からも簡単に把握・取引できる仕組みが必要だ」’さくら事務所の長嶋修会長)と訴える。耐震性などに問題がある中古住宅も需要が見込めるものは修繕を施し、情報を開示するだけで海外の評価は上がると予想する。
日本経済新聞の上記記事より
ということで、この中古住宅市場の未整備が、中古物件がたくさんある地方に海外マネーが流入しない原因であるということです。
逆に言えば、これらの点が改善されれば、インバウンド人気も相まって、地方においても別荘としての需要や民泊としての活用で、中古住宅へ海外マネーが流入して来るポテンシャルがあります。
ビジネスは住宅需要に
また
「米国ではニューヨーク以外にカリフォルニア州、テキサス州など多数のビジネスセンターが点在し、各地で住宅市場が活況だ」
日本経済新聞の同記事
とあり、首都圏以外の場所においてもビジネスが盛況であれば、住宅市場が活況になる可能性があることを示しています。
今富山がやるべき事
さてここまでくれば、富山がやるべきことが見えてきます。
1 住宅履歴情報の整備
上で見てきたように、中古市場が盛り上がらないのは、心理面はともかくとして、中古住宅の情報がきちんと整備されていないことが多きな理由の一つです。
これを率先して富山県内の情報だけでも整備しましょう!
そう簡単なことではないと思います。情報サイトなどの器だけ作ってもうまく機能しなければ意味がありません。住宅情報整備したくなるような減税や補助金の創出などのインセンティブが必要となってくるなど詳細な制度設計を要します。
また建築業界からの反発もあると思います。中古住宅への需要増=新築住宅の需要減となる可能性があるからです。
ここを何とか乗り越えて、この暁には、これをデファクトスタンダードとして日本全国に広めていきましょう。
2 ビジネスフレンドリーな制度を作る
ここで福岡の状況を見てみたいと思います。令和六年の8月時点の人口は165万5千人(推計)。令和元年同月比で3.6%増で、人口減少に悩む地方とは大違いです。
福岡市はスタートアップ支援などの開業率が五年連続全国一となるなどビジネスフレンドリーな環境づくりを進めてきました。
ビジネスが活況であれば人口が増える(=オフィス、住宅需要が増える)という仮説を証明してくれています。ビジネス振興は地価、空き家の状況改善が期待できます。
国内でゼロサムゲームなうえよくわからない移住促進政策や、地域おこし政策を改め、徹底してビジネスフレンドリーな環境を作りあげることは、他との差別化となる非常に可能性を秘めた政策であると思います。
最初にビジネスありき。
少なくとも北陸一ビジネスフレンドリーな制度を作り上げましょう。
ピンバック: 世界の投資マネーが集まる日本 – だが住宅市場は宝の持ち腐れ? – - お客様とのホウレンソウ重視のあいとも不動産