国土交通省および富山県土木部建築住宅課が公表した令和8年度月別新設住宅着工戸数データから富山県内における2026年4月の不動産投資の実態を確認します。
本記事の理解において重要となるポイントは以下の3点です。
- 1富山県の住宅着工戸数が前年同月比88.6パーセント増と急反発した要因は、需要の爆発ではなく前年同月の記録的な落ち込みに対するベース効果であり絶対量は2年前の水準を回復していない
- 投資資金は県全体の着工の半数を占める富山市に集中しており貸家や分譲住宅といった収益物件の開発は県都へ厳格に選別されています
- 西部エリアは持家を中心としつつも一定の賃貸需要を維持する一方、東部エリアは持家への依存度が高く民間投資の対象地域から外れつつあります
概況とベース効果によるパーセンテージの錯覚
全国の2026年4月の新設住宅着工戸数は前年同月比11.4パーセントの増加でした。これに対し富山県の同月の着工戸数は413戸となり前年同月比で88.6パーセント増という突出した伸びを記録しています。しかしこのパーセンテージのみで市場の成長を判断することはできません。
前年同月である2025年4月の着工戸数は219戸でありその前年の2024年4月と比較して56.5パーセントの大幅な落ち込みを記録していました。2026年4月の413戸という数値は前年の異常な低水準からの反動増に過ぎず、500戸規模であった2年前の水準には届いていません。需要の回復ではなく前年のベースが極端に低かったことが88.6パーセント増という数値を生成する直接的な原因です。絶対量を見誤ると市場のポテンシャルを過大評価するリスクが生じます。

は2024年から2026年にかけての富山県の4月着工戸数の絶対量と前年同月比の推移を二軸で示し前年の記録的な落ち込みからのベース効果によるパーセンテージの錯覚を可視化したものです。
富山市への資金集中と投資対象の選別
県内の着工戸数を市町村別に分解すると開発拠点の極端な偏りが明らかになります。2026年4月の全着工戸数413戸のうち富山市での着工は208戸に達し県全体の約50パーセントを占めました。
利用関係の内訳から事業者の投資姿勢が読み取れます。富山市における208戸のうち持家は89戸にとどまります。残りを構成するのは貸家91戸と分譲住宅24戸および給与住宅2戸です。県内全体で着工された貸家147戸のうち約62パーセントが富山市に集中しています。事業者は人口減少と空室リスクを警戒し賃貸需要が厚い富山市へ収益物件の開発を絞り込んでいます。

グラフは2026年4月の富山県内を富山市と西部および東部の3エリアに分類し利用関係別の着工戸数を積み上げ棒グラフで比較したものです。
局地戦の西部と持家市場の東部
富山市以外のエリアでは東西で市場の性質が異なります。
高岡市や射水市を擁する西部エリアでは持家を主流としながらも一定の投資資金が流入しています。
高岡市は着工戸数46戸のうち持家27戸に対して貸家8戸と分譲住宅11戸が着工されました。射水市は39戸のうち持家24戸貸家10戸分譲住宅5戸となっています。また氷見市では着工数35戸のうち貸家としての共同住宅案件が27戸を占めました。西部の中核エリアや特定の用地を取得できた局地では事業用不動産の開発が成立しています。
一方魚津市や黒部市を含む東部エリアは投資対象としての規模を縮小させています。魚津市は着工21戸のうち持家と貸家が10戸ずつとなりましたが滑川市や黒部市や上市町や立山町では着工の大部分を持家が占めています。分譲マンションや大規模アパートの開発案件は見られず個人の住宅実需に依存する市場構造が定着しています。





