2024年7月1日時点の基準地価調査の結果から、富山県の不動産市場は、地域によって明暗がはっきりと分かれる結果となりました。富山駅周辺は再開発事業の進展を背景に上昇傾向を維持する一方、能登半島地震の被害を受けた地域では下落が顕著となり、県全体では32年連続の下落となりました。明暗を分ける要因と今後の動向について、詳しく見ていきましょう。
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基準地価とは?
不動産取引における重要な指標
基準地価とは、毎年7月1日時点における土地の価格を1平方メートルあたりで示したもので、不動産鑑定士が取引事例などを元に評価します。土地取引の指標として、不動産投資や相続税の算定などに用いられる重要な指標です。
ほかの地価
国土交通省が毎年1月1日時点の価格を公表する「公示地価」も同様に重要な指標ですが、こちらは土地収用法に基づき土地を取得する際の価格算定の基準となるなど、公共性の高い土地を対象としています。一方、基準地価は用途や規模などの制限がなく、より広範囲な土地を評価対象としている点が特徴です。
また、主に相続税や贈与税の算定に用いられる「路線価」も、土地の評価額を把握する上で重要な指標です。路線価は、市街地における道路に面した土地1平方メートルあたりの評価額を示したもので、毎年1月1日時点の価格が国税庁から公表されます。公示地価の約8割の水準で設定されるのが一般的です。
富山県の基準地価:二極化が進行する現状
開発が進む富山駅周辺、商業地は上昇続く
富山駅周辺では、大規模な再開発事業が進展しており、オフィスビル建設や区画整理などが続いています。それに伴い、駅周辺への人口と企業の集積が進み、商業地の地価は上昇傾向を続けています。
今回の調査でも、富山駅北側の牛島町で7.0%、駅南の神通本町1丁目が6.2%、桜町2丁目が5.3%と、いずれも商業地で高い上昇率を示しました。不動産鑑定士の竹田達矢氏は、「駅前周辺に高価格帯の商業施設が集積する一方で、周辺部は需要が低迷しており、二極化が進んでいる」と指摘しています。
住宅地は利便性の高いエリアで上昇、地震の影響が残る地域も
県全体の住宅地は0.4%の下落となりましたが、生活利便性の高いエリアでは上昇も見られました。砺波市は5年ぶりに上昇に転じ、立山町も商業施設の進出や宅地造成が進み、2年連続で上昇となりました。
一方で、能登半島地震の影響を受けた地域では、地価の下落が顕著となっています。氷見市は住宅地、商業地ともに下落し、県内最大の3.0%の下落率となりました。高岡市伏木古国府では液状化の被害が大きく、11.3%もの下落という厳しい結果となりました。県内変動率下位10地点のうち、7地点が地震の影響を受けた地域となっており、人口減少も相まって、復旧後も下落傾向が続く可能性が懸念されています。
北陸3県:新幹線効果と地震の影響、地域経済の明暗を分ける
北陸3県全体で見ると、新幹線開業の効果が表れている地域と、地震の影響が大きい地域とで明暗が分かれています。
- 石川県: 新幹線効果で金沢市、小松市、加賀市などで上昇傾向が見られる一方、能登地方は地震の影響で下落幅が拡大し、全国の住宅地変動率下位10地点を石川県が独占しました。
- 福井県: 新幹線開業による効果で福井駅前は7.2%上昇と県内最大の伸び率を記録しました。敦賀市も新幹線効果で27年ぶりに住宅地が上昇しました。
- 富山県: 富山駅周辺は開発効果で上昇が続く一方、能登半島地震の影響を受けた地域は下落しました。
新幹線開業による経済効果は大きく、特に駅周辺では地価上昇の勢いが見られます。しかし、地震の影響を受けた地域では、住宅需要の低下やインフラ復旧の遅れなど、地価下落の要因が山積しており、地域経済への影響が懸念されます。
まとめ:地域経済の活性化と災害からの復興が課題
基準地価調査の結果から、富山県では都市部への人口と経済活動の集中が進んでおり、地域間の経済格差の拡大が懸念されます。また、地震の影響を受けた地域では、住宅需要の低下やインフラ復旧の遅れなど、地価下落の要因が山積しており、一日も早い復興が望まれます。
他の「地価」についての記事はこちら:富山県不動産市場の二極化:AIが分析する地価動向と投資戦略