サマリー
- 富山県全体の新設住宅着工戸数は前年度比3割超の減少となり非木造や共同住宅の開発が大きく落ち込んだ。
- 富山市は県内の貸家および分譲住宅供給の過半を占め局地的な一極集中が進んだ。
- 高岡市や砺波市では長屋建による貸家供給が継続する一方魚津市などでは共同住宅の開発が停止した。
富山県土木部建築住宅課が令和8年5月11日に公表した令和7年度の新設住宅着工戸数統計によると県内の住宅開発動向に大きな変化が生じています。
県内住宅着工34%減、歴史的急落の波紋「建てられない」時代の到来と不動産ビジネスモデルの崩壊
全体概況と建築構造の変化
富山県全体の新設住宅着工戸数は3783戸となり前年度の5927戸から36.2パーセント減少しました。利用関係別では持家が24.6パーセント減の2039戸となった一方貸家は39.2パーセント減の1305戸分譲住宅は58.9パーセント減の425戸とより大きな減少幅を記録しました。

構造別に見ると木造の着工戸数は29.4パーセント減にとどまりましたが非木造は60.8パーセント減と大きく落ち込んでいます。建て方別でも一戸建が23.6パーセント減であるのに対し共同住宅は54.4パーセント減となりました。建築費の高騰が鉄骨造や鉄筋コンクリート造による大型の共同住宅開発の採算を悪化させ事業者が新規着工を見送った結果が数字に表れています。
富山市への開発集中と供給用途の偏り
県庁所在地である富山市の着工戸数は1893戸に達し県全体の半分を占めました。持家は869戸貸家は775戸分譲住宅は235戸着工されました。県内で供給された分譲住宅の半数以上貸家の約6割が富山市に集中しています。

富山市における貸家の内訳を見ると長屋建が321戸共同住宅が448戸とアパートやマンション形態の開発が成立しています。また分譲住宅の内訳は一戸建が193戸共同住宅が42戸となっており県内で唯一分譲マンションの開発が行われました。地価や建築費の上昇分を販売価格や家賃に転嫁できる需要が富山市の中心部や利便性の高いエリアに限定されつつあります。
高岡市砺波市魚津市における事業性の違い
富山県内の他の中核都市ではエリアごとに開発の手法が分かれています。
県西部の中核である高岡市では総着工戸数605戸のうち貸家が217戸供給されました。その内訳は長屋建が147戸と多くを占め共同住宅は69戸にとどまります。分譲住宅は92戸開発されましたが共同住宅はゼロであり一戸建が中心です。
砺波市では総着工数182戸のうち貸家が68戸供給され長屋建22戸共同住宅44戸の構成となりました。商業施設や交通網が整うエリアにおいて小規模なアパート開発が継続しています。
一方県東部の中核都市である魚津市は総着工戸数が96戸まで縮小しました。貸家の供給は18戸ありましたがそのすべてが一戸建または長屋建であり共同住宅の着工はありませんでした。分譲住宅も8戸にとどまります。実需層の購買力と開発コストのバランスが崩れた地域では事業リスクの高い共同住宅の開発が停止します。
周辺エリアにおける局地的な動きと選択
(※Pythonグラフ3挿入位置。富山市以外の主要エリアにおける貸家の建て方別内訳を示し長屋建と共同住宅の供給バランスの違いを可視化する)
中核都市以外の周辺エリアでも立地条件に応じた開発が行われています。

富山市と高岡市に隣接する射水市では総着工戸数357戸のうち貸家が106戸供給されました。長屋建が35戸共同住宅が70戸と隣接する二大都市の通勤圏としての賃貸需要を吸収する形でアパート開発が進んでいます。
中新川郡の立山町では総着工数94戸の中で貸家が17戸分譲住宅が6戸供給されました。持家一戸建だけでなく小規模な長屋建賃貸や戸建分譲事業が成立する余地が残されています。
氷見市では総着工戸数105戸のうち共同住宅の貸家が42戸着工されました。特定の事業所の稼働に伴う従業員向けの賃貸需要など局地的な要因が開発を後押ししたと考えられます。
コスト環境下での立地と構造の選択
富山県の住宅市場は全体の規模が縮小する中で事業者による選別が進んでいます。
資材価格や人件費の上昇により鉄筋コンクリート造などの非木造建築は採算の確保が困難になりました。その結果コストを抑えやすい木造の長屋建や一戸建へ開発手法が移行しています。
また家賃や販売価格を引き上げられるエリアは富山市の一部などに限られます。高岡市や射水市では木造アパートを中心としたリスクを抑えた賃貸開発が選ばれ魚津市などでは共同住宅の開発自体が見送られました。建築コストの増加分を吸収できる局所的な需要の有無と木造を中心とした建築計画の最適化が事業を継続する条件になります。





