2024年版のJLLによるグローバル不動産透明度インデックスで、日本は世界11位、アジア圏では1位を獲得しました! これは喜ばしいニュースですが、手放しで喜んで良いのでしょうか?
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実は低評価…「取引プロセス」の実態
このランキングは、「市場ファンダメンタルズ」「上場法人ガバナンス」「規制・法制度」「取引プロセス」「サステナビリティ」など、多岐にわたる項目から評価されます。気候変動対策など、不動産の透明性とは直接関係ない項目も含まれている点は気になるところです。
そして、私たちに最も関係する「取引プロセス」の評価は、なんと32位と先進国らしからぬ低さなのです。これは、長年問題視されてきた「囲い込み」という悪しき慣習が、大きく影響していると考えられます。
不動産業界の闇?「囲い込み」とは
「囲い込み」とは、不動産仲介業者が売却依頼を受けた物件情報を独占し、自社だけで売買を完結させようとする行為です。本来、売主と買主双方から公平に仲介手数料を得るべきなのに、売主の利益を無視して自社の利益を優先する、悪質な行為と言えるでしょう。
具体的には、売却依頼を受けた物件情報を、他の不動産会社と共有するシステム「レインズ」に登録せず、あたかも買い手候補がいないかのように装って、売主に不利な条件で売却を迫るケースが多く見られます。
なぜ「囲い込み」がなくならないのか?
不動産仲介業者は、売主と買主の双方から仲介手数料を得ることで利益を得ています。囲い込みを行うことで、売主と買主双方から手数料を得ることができ、より多くの利益を得ることが期待できます。
また、レインズに物件情報を登録すると、他の不動産会社もその情報を見ることができるようになり、顧客獲得競争が激化します。囲い込みを行うことで、他の不動産会社との競争を避けることができます。
「囲い込み」がもたらす悪影響
囲い込みは、不動産取引の透明性を低下させ、市場の健全な発展を阻害する要因となっています。
売主にとっての不利益
- 適正価格での売却機会を逃す可能性: 囲い込みによって、他の不動産会社や購入希望者からの問い合わせが遮断され、より高い価格で売却できる機会を逃してしまう可能性があります。
- 売却活動の長期化: 囲い込みによって、限られた購入希望者に対してのみしか物件情報が開示されず、売却までに時間がかかってしまう可能性があります。
- 不利な条件での売却: 市場の動向を把握できないまま、仲介業者に提示された条件で売却せざるを得ない状況に陥る可能性があります。
買主にとっての不利益
- 希望に合う物件情報を得られない: 囲い込みによって、市場に出回っているはずの物件情報が隠蔽され、希望に合う物件を見つけることが難しくなる可能性があります。
不動産取引の透明化に向けて
不動産業界には、透明性と公平性を確保し、顧客の利益を第一に考える倫理観が求められています。
同時に、消費者が「囲い込み」の実態を知り、自衛策を講じることも重要です。
あなたの不動産取引、大丈夫? 不安を感じたら…
- レインズへの登録状況を確認する: 売却を依頼した物件が、レインズに登録されているかを確認しましょう。
- 不審な点があれば、専門機関に相談する: 不動産取引に関するトラブルは、国民生活センターなどに相談することができます。
不動産取引を安心して進めるためにも、消費者は「囲い込み」の実態を知り、自らの身を守る術を身につけることが大切です。
動画はこちらから:日本の不動産取引、透明性でアジア1位も…潜む影「囲い込み」の実態とは?